産業カウンセリングの2つの視点
視点1)「セクハラを受けた」その気持ちを受け入れる
セクシュアル・ハラスメントの防止、救済で重要なことは、第一義的にはセクハラを受けた人が「セクハラだ、と感じたことがセクハラだ」ということです。
それだけに個人差がありますが、まず、そこを受けいれ、傾聴することによって、彼女・彼は何を訴えたいかの本当の気持ちをきき取ることが肝心です。
視点2) 二次被害から被害者を守る
セクシュアル・ハラスメント被害者は、その事実を訴えるだけでもかなりの精神的負担を強いられます。自分にも落ち度はなかったのか、必死に抵抗していたら、あるいはハッキリ誘いを断っていたらと自分を責めてから、やはり立ち上がらないと、と決意しています。しかし、決意できたとしても周りからの批判もたえません。たとえば、振られた腹いせじゃないか、といった中傷や、優秀な人間の出世を駄目にした責任は取れるのか。妻や子どもがかわいそうなど。そして、あの忌まわしい現状の再現は、あの日の恐怖をフラッシュバックさせるでしょう。こうして被害者は2度目の被害を受けるのです。ですから、被害者に寄り添い、支援しなければならない。それができるのが産業カウンセラーです。
「パワハラ」も「セクハラ」も根っこは同じ差別
アメリカでも最初の頃はセクシュアル・ハラスメントを認めませんでした。
「史上初のセクハラ裁判」といわれるバーネス事件でコロンビア特別区連邦地裁判決(1974年)は、バーネスが差別的取り扱いを受けたのは「上司の要求を拒絶したためであって、女性であるからではない」として性差別を認めませんでした。
このように、「セクハラ」は「パワハラ」の問題とされてきました。そうなると「職場のイジメ」は、どうなるのでしょうか。
「和」の思想と少数者排除イジメの構造
聖徳太子の17条の憲法にうたわれた「和を以て尊しとなす」以来の伝統的文化なのか、稲作を中心として発達した農耕民族による灌漑築造より発生した村落共同体「結い」からきたものなのかは議論のあるところですが、現代企業においても、グループによる生産システムが生産性を発揮しています。こうした「和」を生かした集団化は、集団外に対しては対抗色を高め排外することによって集団内部の団結を強めるという力を発揮してきました。しかし、内部の団結を至上におくと内部の少数意見を敵視し、外に排除するか、多数に従わせようとします。ここに集団によるイジメが発生します。こうした、広い意味での「パワハラ」を克服するには、「和」の優位点を生かしつつ弱点を克服する必要があり、そのためにはグループ・カウンセリングやコミュニティ心理学的アプローチが必要になると考えます。
「パワハラ」で労災認定
2005年、道路舗装の大手工事会社(本社東京)の某県内の営業所長の男性(当時43歳)が2004年9月に自殺した件について、当該労働基準監督署は業務上と労災認定しました。
当時、弁護団は「パワハラ」(職権による人権侵害)が原因と認められた異例のケースとしましたが、このようなケースは増えてきています。こういったなかで、「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針」の一部が改正されました。つまり、「ひどい嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」(強度Ⅲ)が追加されました。