がん罹患経験者と考える
新型コロナウイルス感染問題との上手な付き合い方
緊急事態宣言が解除され、街に日常が戻りつつある中、今なお我々の生活に不安の影を落としている新型コロナウィルス感染問題。
そして、皆様の中でも特に、がんなどの私傷病に罹患している方、治療中の方などは不安が大きい状態が続いているのではないでしょうか。
私自身、2年半前に中咽頭がんを宣告され、約8ヶ月間の治療・療養を経て復職したがんサバイバーです。
今回は、そんな私の経験も踏まえて、この新型コロナウイルスとの上手な付き合い方について一緒に考えてみたいと思います。
いつも通りのケアを心がける
2017年12月から、私はまず抗がん剤治療を始めました。
毎週一回、通院で抗がん剤を入れていき、約2ヶ月間その繰り返しという生活を続けていたのですが、当時とても心配だったのが、感染症でした。
風邪やインフルエンザなどにかかってしまうと、抗がん剤治療が受けられなくなってしまい、治療計画に遅れが生じてしまいます。
ですから、人ごみなどを避けることはもちろん、手洗い、うがい、マスク着用、体調管理などは欠かさず行っていました。今思えば、これらは新型コロナウイルスのリスクを抱えている現在とほぼ同様のケアではないかと思います。
つまり、現在、がん治療中の方や罹患経験者の方は、コロナウイルス感染の不安を同時に抱えてはいるものの、過度にケアを意識するというよりも、これまでやってきたケアを今一度しっかり丁寧に行うことを心がけていくのがよろしいのではないでしょうか。
もちろん、私が治療していた頃に比べて、現在のほうが、日々の状況も刻々と変化しているため、気がかりなことも少なくないでしょう。しかし、過度なケアは、かえって不安を増大させ、余計なストレスを招きかねません。
ぜひこういうときこそ、「これまで通り」を意識してみてください。
不安を口にする場を設ける
とはいえ、「ただでさえがん治療の不安が募る中、なぜ新型コロナウイルス感染問題まで……」と、心がどうしても晴れない方もいらっしゃるかと思います。
そんな不安を心に抱え続けておくのは決して健全な状態ではありません。
「みんな同じように大変な状況だし、自分だけ不安だなんて言いづらい」と思われているかもしれませんが、ぜひ少し勇気を出して、そのようなお気持ちを口に出す場を設けてみてほしいと思います。
私の場合、抗がん剤治療が終わった後、放射線治療を約2ヶ月行いました。
最初は痛みも感じることなく、順調でしたが、途中から喉が焼けただれてきて、最後の方は、水を飲むのにも激痛が走り、何も食事がとれなくなりました。
そんな頃、気分転換をしようと妻と一緒に行った公園で、思い切って辛い気持ちを打ち明けました。
「治療が辛いし、最後までやっても治るかもわからない。もう止めてしまいたい」と。
弱音を吐いてしまったことで、妻に怒られるかなと思いましたが、逆に妻からは、「そんなに辛いんだね。どうしても辛かったらもう止めてもいいよ」と言われました。
自分の気持ちに共感してもらえたのです。
その後、私は気持ちに共感してもらえたということで逆に力が湧いてきて、最後まで苦しい治療をやりきることができました。
もし、辛さを自分の中に閉じ込めていたら、どうにかなってしまっていたかもしれません。
カウンセラーや相談員に相談してみる
とはいえ、家族にはなかなか気持ちを伝えにくい、という方もいらっしゃるかもしれません。
そのような方は、例えば、カウンセラーや相談員に不安を伝えてみる、という方法もあります。
一般社団法人日本産業カウンセラー協会が運営している
「働く人の悩みホットライン」や
全国の相談室でのカウンセリングなども活用いただけますし、勤務先の福利厚生などでカウンセリングサービスを受けられる方もいらっしゃるかもしれません。
がん診療連携拠点病院などには、がん相談支援センターが設置されているところも多く、無料で相談に乗っていただけます。
私も、治療中は、勤務先の福利厚生でカウンセリングサービスを使ったり、がん相談支援センターに寄ってみたりと、できるだけ不安を抱え込まないよう心がけていました。
何かに没頭する
もう一つ、私が当時心がけていたのが、「何かに没頭する」ということでした。
人は時間があるとつい、余計なことを考えてしまうもの。
よって、できる範囲で何かに没頭したり、集中したりすることで、不安の入り込む余地をなくしてしまうのも一つの手ではないかと思います。
私の場合は、「ジグソーパズル」「プラモデル作り」「テレビゲーム」「映画鑑賞」「読書」「ブログ執筆」など、家の中など安全な場所で、できる範囲のことに取り組んでいました。
一見、「なんだ、そんなこと」と思われそうですが、意外と楽しいですし、童心にも帰れます。
ぜひ騙されたと思って、取り組んでみてください。
最後に
「ウィズコロナの時代」と言われるように、当面は新型コロナウイルス感染問題がこの世界からなくなることはないでしょう。
一旦がん治療を終えた私でも不安が募るわけですから、がんや私傷病を抱えている方の不安感の高さは想像に難くありません。
しかし、それによってストレス度合いが高まれば高まるほど、免疫力の低下や体調不良など、治療におけるマイナス要素が増えてしまいます。
今回述べた「いつも通りのケアを心がける」「不安を口にする場を設ける」「何かに没頭する」といったヒントを参考にしていただきながら、できるだけストレスを抱えすぎない日常を過ごされることを心よりお祈りしています。
一般社団法人日本産業カウンセラー協会
産業カウンセラー 花木裕介
上記と同じ内容をPDFにしています。周りの方への情報提供にご活用ください。
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