働くしくみがストレスを生む
部下を持つ管理職が少なくなったが
情報革命の進展で、職場での仕事のやり方が変わり、多階層的であったラインがフラット化し、中間管理職が減らされています。しかし、このことが逆に管理監督者と部下との距離を縮め、直接的責任を増大させることになっています。旧労働省が出した「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」(2000年)でも、労働者自身の健康に対するセルフケアとともにライン管理監督者によるケアの重要性が強調されています。こうして、企業からの管理職研修の要望が当協会に増えています。
管理職に必要な3つの役割とカウンセリング・マインド
國分康孝氏(東京成徳大学名誉教授・協会顧問)は、部下を持つ人間としてなすべき役目についてこう言っています。
「3つあると思う。(1)どのようにして集団をまとめていくか、(2)どのようにして集団を動かしていくか、(3)どのようにして一人ひとりの部下を育てていくか、である。
(1)については、部下の求めているもの、部下の欲求を絶えず充足していくことであり、(2)のためには〈これでいくぞ〉という目標を掲げなくてはいけない。プロのカウンセラーなら、この登校拒否児がせめて週に4日は登校するようにしよう、といった目標を立てる。目標がなければ、行動を変容させようがない。管理職はどういう目標を立てたら、部下のやる気をだせるか、また、この目標には無理はないか、と考える必要がある。では(3)の仕事は、部下の一人ひとりを育てることである。本人の能力と興味が何であるかを気づかせることである。伸びる人とは、能力と興味が一致した分野で仕事をしている人である」 これ以上、詳しくは紹介できませんが、要するにカウンセラーは、クライエントにどう接するのが最も良い方法かを始終考えているわけです。そういう意味で、カウンセリングの諸技法を学ぶことは有効です。でも、管理職の方がカウンセラーになりきることはできません。せめて、その精神(カウンセリング・マインド)だけでも学んで職場で活かしてほしいのです。それが当協会の管理者研修の一つの特徴となっています。次頁は企業で行われるカリキュラムの内容です。
メンタルヘルスにおける管理職の役割
ライン管理者の役割は、
- 1つは部下の「仕事上のストレス要因」を把握し、除去・軽減すること(仕事の量、仕事の質、過重労働、テクノストレスなど)
- 2つは「緩衝要因」(周囲からの援助、ストレスを軽減できる要因)について配慮することです。
また、同じことであっても、反応には個人差があります。管理者としては、個人差にも目を向け、一人ひとりの違いに合わせた対応をすることが求められています。