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つながるということ ~SNS相談という新たな相談のかたち~

SNS相談は、LINEなどのSNSやチャットを使って悩みを相談ができる新たな手段です。

2017年、長野県で実施された「ひとりで悩まないで@長野」という中高生を対象としたSNS相談が、行政としての初めての試みと言われています。
以来、国や地方自治体では、いじめや家庭環境に悩む子ども相談、生活困窮相談、女性相談、自殺相談など、苦しさを抱える方の声にならない声を受け止める窓口が新たに設置される流れが広まっています。コロナ禍で人々の孤立が深まってしまったことも、その追い風になっているように感じます。

当協会でも、関西支部で行政のSNS相談事業の受託を機に、SNSカウンセラーの養成やSNS相談事業にも取り組んでいます。
SNS相談を利用するのは、比較的若い世代(10代~20代)が多いというイメージがあるかと思います。電話や対面に抵抗を感じる若者にとって、普段使い慣れているSNSのほうが、気持ちや思いを率直に打ち明けやすいということは当然のことと思います。
一方で、働く人を対象にしたSNS相談窓口では30~40代を中心とした働き盛りの世代でも、テレワークの普及も含めたチャットコミュニケーションの利用増加もあってか、利用者は広まりつつあります。
いまは、コロナ禍、育児や介護、治療と仕事の両立、ダイバーシティ・インクルージョンなど、多様な働き方、見直しが求められる時代です。働く人のメンタルヘルスケアの一環として、利用のハードルが低いSNS相談は、福利厚生や健康経営の一つとして導入を検討する企業もますます増えていくのではないかと期待しています。

SNS相談の必要性

一方、「SNS相談でできることは限られている」という意見があることも確かです。対面や電話と比べ、SNS相談は圧倒的に情報量が限られていますので、相談員には高い想像力と現実吟味の力、SNSならではのテキストを中心とした関わり方には高いスキルが求められます。
しかし、電話をかけること、電車を乗り継いでカウンセリングルームにいくことが時間的、環境的、経済的に難しい状況に置かれた利用者側の人たちにとっては、自分のスマホから相談員に繋がるということは、メリットの方が大きいように感じます。

SNS相談の可能性を教えてくれた相談者がいます。10代の女性で、月に数回SNS相談を継続的に利用していました。
利用当初の語りは幼く、時おり相談員につっかかるような言葉を見ると、これまでのつらい家庭環境の影響もあり、自分自身で考えることを諦めてしまっているかのような印象でした。そのような彼女に対し、担当する相談員は根気強く対応しつづけました。彼女の抱えるやり場のない怒り、不安に寄り添い、適切な承認を重ねていきます。
すると少しずつですが、彼女の言葉に変化がみられるようになってきました。相談員に対する粗暴な言葉遣いはなくなり、自分のこれからの生き方を「共に考える」という方向にシフトしていきました。

言葉のやり取りを重ね、手のひらに届く相談員の言葉「それほどの状況の中、よく頑張ってきましたね」「あなたが腹立たしく思う気持ちは無理もない」といった自分以外の誰かのメッセージが、しぼんだ心と狭まった視野を少しずつですが膨らませ、広げることができるのだと、その女性はご自身の持つ力を言葉で示しながら、教えてくれたように思います。

SNS相談の広がりとともに

前述したとおり、SNS相談はリアルタイムでテキストのやり取りで相談者の状態を把握し、理解していくことが求められ、専門のスキルと知識を要します。 SNS相談の普及に伴い、「相談対応の品質の確保」という問題も新たに持ち上がってきているように思います。
時に人の命と向き合うような対応を行う相談員は、時間的・金銭的にも学習のための投資をしてトレーニングと自己研鑽を重ねています。新たな相談員を育成するためには経験豊富な管理者やアドバイザーがしっかり現場で相談員をサポートし、相談員自身も安心して相談者に向き合える体制・環境づくりも不可欠です。

SNS相談が広がることは、これまで支援がいきわたらなかった方々とつながることができる可能性となります。
まずはハードルの低いSNSでつながり、そこから電話や対面、専門の相談機関へつながるというシステムがうまく機能することできれば、日本のメンタルヘルス支援のかたちも変化していくと考えます。声を出すことができない、SOSが出しづらい方々の新たな支援手段として、これからもSNS相談を広めていけるよう、自分にできることに取り組んでいきたい、そう考えています。

  

松崎優佳(まつざき・ゆか)
シニア産業カウンセラー/キャリアコンサルタント/公認心理師/SNSカウンセラー
一般社団法人日本産業カウンセラー協会 SNS相談センター管理者/SNSカウンセラー養成講座講師

 

参考書籍:『SNSカウンセラー養成講座テキスト』(全国SNSカウンセリング協議会)


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